これからの法改正の動き
これまで紙の印刷物での発行が基本とされてきた「官報」の電子化は、わが国のデジタル化にとって象徴的な取組みとされています。
紙の官報は「インターネット版官報(電子官報)」という形で、すでにインターネット等で提供されていますが、原本はあくまで紙の官報であり、電子官報は単なる付属物として扱われています。
電子官報を官報の「正本」とすることについて、デジタル臨時行政調査会から、令和5年までに検討・論点整理を終え、できるだけ早期に法案を国会に提出する方針が示されていました。
それを受けて設立された官報電子化検討会議が、「官報電子化の基本的考え方(案)」を公表しました。
この案のポイントとして、次のような事項が示されています。
(1)官報の電子的発行による、国民の利便性向上(どこからでも、すぐに、無料で閲覧・入手可能)
(2)インターネットが利用できない人への配慮(印刷書面の配送・販売、国会図書館等での閲覧)
(3)電子化に伴うリスク(通信障害、改ざん等)への対応
(4)電子化の確実な実施およびデジタルを活かした業務効率化・利便性向上の検討・実施
通信障害・改ざん等の予防策として、サイバーセキュリティ対策、システム障害等に備えた冗長性(余裕のある状態)の確保、改ざん検知のための電子署名およびタイムスタンプの活用等が挙げられています。
電子署名等については、国の認定制度に基づく信頼性の高い技術を採用し、その時点で最適な技術に適宜見直すこととされています。
また、通信障害や災害等で電子的に発行できない場合の代替措置として、書面版官報の発行、緊急官報の掲示を行ない、復旧後に電磁的記録を作成してインターネットで情報提供を行なうことが示されています。
パブリックコメントの手続きを経て最終的な基本的考え方が策定され、それを踏まえた新法が国会に提出される見込みです。
注目したい法改正の動向
- 水素の利活用の促進
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燃焼時にCO2を排出しない水素は、カーボンフリーなエネルギーとして、幅広い産業分野で注目されています。
6年ぶりに改定された「水素基本戦略」では、水素の安全な利活用のため、大規模な水素サプライチェーンの構築に向けて、適用法令全般の整理・明確化と保安規制の合理化・適正化を図るなどの環境整備を、スピード感を持って行なうという方向性が示されています。 - 建設業の請負契約透明化
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国土交通省中央建設業審議会基本問題小委員会で、請負契約の透明化による適切なリスク分担等についての審議事項が示されました。
今後、当事者間のコミュニケーションを制度的に担保・推進するなど、契約適正化を推進する建設業法等の見直しが検討されます。 - 犯罪被害者支援の拡充
- 犯罪被害者の支援を充実させる観点から、弁護士による法律面のサポートについて、支援の対象範囲やそのあり方等についての論点整理を行なうため、「犯罪被害者支援弁護士制度検討会/犯罪被害者支援弁護士制度・実務者協議会」が設置されました。
- NTT完全民営化への道
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防衛費の財源として、政府保有のNTT株を売却して一部を充てるという案が出ています。
現行のNTT法では、政府が3分の1以上の株を保有することが規定されていますが、自民党は政府保有のNTT株を売却するために、NTT法の改正について検討するプロジェクトチームを設置する方針を明らかにしています。 - 男性育休取得率の公表義務を拡大
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常時雇用する労働者数が1,000人超の事業主に対して、男性の育児休業取得率の公表が義務付けられています。労働政策審議会雇用環境・均等分科会では、その範囲を「従業員300人超」に拡大する方向での検討が進んでいます。
男性の育児休業取得率の目標を掲げる場合には、取得日数や育児・家事時間等も含めた目標の検討が必要だとも指摘されています。
出典・文責 ≫ 日本実業出版社・株式会社エヌ・ジェイ・ハイ・テック